1 かしわと煮物

映画を見てもドラマを見ても 料理している手元やごはんを食べるシーンを覚えてる。



一昨年に 大好きだったおばが亡くなった。
二年たった今でも 何度も思いだしては メソメソしている。
わたしは 仕事を早く切り上げ 母と二人 飛行機で鹿児島へ飛んだ。

わりと 暗めの服を着て 靴は黒がなかったから そこにあった物を履いた。
飛行機の中で 母が「飛行機乗るのにスリッパやん」と言った。
未だに母は 飛行機に乗る時は 「綺麗な服を着なさい。」という。


お線香をあげた。
泣きじゃくる母を抱いて 親戚にあいさつにまわる。
おばの顔は見れなかった。
おじが 食堂をしてるので ごはんを作ってきてくれていた。
鹿児島の甘い煮物 切り干し 餃子 かしわの唐揚げ おにぎりなんかがあったと思う。
「おじちゃんが作ったんぞ。食べんか。」
泣いてばかりの 私たちに ごはんとビールを勧めた。
そういえば なにも食べてない ペコペコだった。
鹿児島は 醤油が甘いので 煮付けはなんでも甘い。この味が大好きだ。
いくら悲しくても いつでもどこでも お腹は空く。食べる だから 動ける。

「はよ顔見てあげなさい。」
綺麗にしてもらって ぐったり動かない 和子おばちゃん。
もう 涙は出なかった。
ちゃんとお別れがしたかった。

帰ったら母に 煮ものを習おうと思った。甘い煮ものをいつでも 食べれるように。

今日は良い天気。あの日と一緒。